GaN(窒化ガリウム)を使ったACアダプターとは

次世代半導体と言われるGaN(窒化ガリウム)ICを搭載したACアダプター、スイッチング電源について解説したページです。ユニファイブが開発したUSB-PDアダプタに採用しております。

次世代半導体、GaN搭載ACアダプターとは

GaNって何? 

 最近量販店でもよく目にするGaN PD搭載のUSB ACアダプターですが、その”GaN”とは、窒化ガリウムのことであり、パワーエレクトロニクス分野に革新的な変化をもたらしている注目の次世代素材です。何十年もの間、シリコンをベースとしたMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)は、エネルギーを電力に変換する役割を持ち、現代の日常生活に欠かせないものとなっていました。しかし、その一般的だったシリコンMOSFETの改良や電力効率の向上には理論的な限界があり、現代の技術ではこれ以上改善の余地のない程のレベルまで到達しつつあります。

 さらに、近年では電力密度や電力効率への要求が高まり、先進国が中心となり、環境汚染に歯止めをかけるべく、様々な規制がかけられ始めた昨今のトレンドの中で、シリコンという素材は、このような環境を重んじる流れに対応するのが難しい成分を持つ素材です。それに比べ窒化ガリウムは、電力システムの効率、性能、電力密度の向上へのニーズの高まりに対応できる特徴のある素材なことから、シリコンに代わる次世代パワースイッチング技術の要として広まりつつあります。

では、窒化ガリウムとは? 

 窒化ガリウムは、自然界では元素として存在しません。通常、ボーキサイト鉱石からアルミニウムを製錬する際や、閃亜鉛鉱を加工して亜鉛を製造する際に副産物として得られるため、抽出・精製時の二酸化炭素排出量が非常に少なく済みます。ガリウムは毎年300トン以上が生産されており、世界中の埋蔵量は100万トン以上と推定されています。加工時の副産物としてできるため、1 kgあたり約300ドルと比較的安価であり、1 kgあたり約6万ドルの金に比べてその価格は200分の1です。

また、環境面のメリットの他、2元III/V族直接遷移型半導体で、高温下でも正しい動作ができるハイパワートランジスタに適した物質です。

GaNの歴史

ドミトリ・メンデレーエフの肖像画

ガリウムの存在は、1871年にドミトリ・メンデレーエフによって予言されました。そのわずか数年後の1875年にパリでポール・エミール・ルコック・ド・ボアボードランにより発見され、彼の母国フランスのラテン語名である「ガリアゴール」の「ガリア」にちなんで命名されました。

  純粋な窒化ガリウムの融点はわずか30℃であり、人の平熱では手のひらで溶けてしまいます。 窒化ガリウムが初めて合成されるまでにはさらにそれから65年ほどの年月を要し、また、1960年代に入るまでは窒化ガリウムの単結晶膜を成長させることはできませんでした。化合物であるGaNの融点は1,600℃以上あり、シリコンの融点より200℃も高温です。

 1972年、窒化ガリウムにマグネシウムをドープしたGaN系のLEDが誕生しました。これは画期的な出来事でした。当初は商用としては十分な明るさではなかったものの、青紫色の発光が可能な初めてのLEDだったからです。 

 1990年代以降、窒化ガリウムは発光ダイオード(LED)に広く使われるようになりました。窒化ガリウムは、ブルーレイディスクの読み取りに使用される青色光を発します。また、窒化ガリウムは、半導体パワーデバイス・RFコンポーネント・レーザー・フォトニクス等にも使用されています。将来的には、センサー技術の分野でもGaNが使われるようになると言われています。

 2006年には、有機金属気相成長法(MOCVD)によって標準的なシリコンウェーハのAIN層上にGaNの薄膜を成長させた、エンハンスメントモードGaNトランジスタ(GaN FETとも呼ばれる)の製造が開始されました。AIN層は、基板とGaNの間のバッファとして機能します。 この新たな方法により、窒化ガリウムトランジスタは、シリコンと同じ既存の工場で、ほぼ同じ製造工程で製造できるようになりました。既知の工程を使用することで、シリコンと同じく低コストでの製造が可能となり、性能を大幅に向上させた小型トランジスタの導入への障壁を減らすことに繋がります。 詳しく説明すると、すべての半導体材料にはバンドギャップと呼ばれるものが存在します。これは、電子状態が存在できない固体のエネルギー範囲を指します。簡単に言えば、バンドギャップとは、固体材料がどれだけ電気を通すことができるかということです。シリコンのバンドギャップが1.12 eVであるのに対し、窒化ガリウムのバンドギャップは3.4 eVです。窒化ガリウムのバンドギャップが広いということは、シリコンのMOSFETよりも高電圧かつ高温に耐え得ることを意味します。

 このような広いバンドギャップを持つことにより、窒化ガリウムは、光エレクトロニクスの高出力・高周波デバイスへの応用を可能にしています。 窒化ガリウムは、ヒ化ガリウム(GaAs)トランジスタよりもはるかに高い温度や電圧でも動作できるため、イメージングやセンシングなどのマイクロ波デバイスやテラヘルツ(ThZ)デバイスの電力増幅器としても理想的だと言われております。

GaNの利点とは

 光エレクトロニクスの高出力・高周波デバイスへの応用を可能にした素材であるGaNを、ACアダプターに採用することでどのようなメリットがあるのでしょうか。GaNをACアダプターに採用することについての利点について説明します。 

 一般的にGaNはシリコン素材を使ったものとよく比較されます。現在の標準となっているシリコン素材をベースとしたMOSFETは、AC/DC電源・DC/DC電源・モーター制御デバイスなど、わずか数十ワットから数百ワット、数千ワットに至るまで、電力応用分野の電源スイッチにおいて幅広く使われており、パッケージング、オン抵抗RDS、定格電圧、スイッチング速度などが継続的に改善されてきました。

 しかし、シリコン素材を使った半導体の性能は、長年の素晴らしい技術の進歩により、理論的限界に近づいており、これ以上の改良は見込めないほどになってきております。一方、窒化ガリウムをベースにしたパワーデバイスはシリコンよりも高い臨界電界強度を持つ高電子移動度トランジスタです。この電子移動度の高さは、GaNがシリコンに比べて電界強度が高いことを意味し、また、オン抵抗や降伏電圧が同じ場合、GaNデバイスはシリコン半導体に比べて小型になります。

 GaN FETは低損失・高効率の性能には欠かせない、非常に速いスイッチング速度と優れた逆回復特性を備えています。現在、600/650V定格のGaN FETは多くの市場に出回っております。

 ACアダプターに用いる利点としては、大まかに以下の3点が挙げられます。

発熱への効果

 GaN材料はバンドギャップが広いため、シリコンに比べて高い熱伝導率を持ちます。この特性は、GaNを使ったデバイスのより高温下での動作とより効率的な冷却を可能にし、ACアダプタを低温に保ち、熱によるダメージから守ることができます。

高電力密度化による、サイズの小型化

 スイッチング周波数や動作温度がシリコン素材の部品よりも高いため、ヒートシンクを小さくしたり、空冷するためのファンの廃止や磁気の低減などが可能になります。GaN部品のスイッチング周波数が高いほど、電源回路で使用するインダクタやコンデンサのサイズを小型化することが可能になります。ACアダプターの中身の電子部品の搭載数の減少により、筐体のサイズが小さくすることができるということです。

音響ノイズの低減、ワイヤレス電力伝送の実現

 周波数が高いほど、モーター駆動型アプリケーションでの音響ノイズが少なくなります。また、高周波数により、より高い出力でのワイヤレス電力伝送が可能になり、空間的な自由度を高め、送信と受信のエアギャップをより広くできます。現在では電気自動車への給電技術にも、この技術が研究されているようです。

ユニファイブが開発したGaN搭載ACアダプター

 GaN搭載ACアダプターの写真

 ユニファイブが開発した USB PD 充電器は、 上記の利点を持った新型半導体、GaN窒化ガリウムを採用し、PD3.0、QC4+等の最新のテクノロジーに対応しており、一般的 なノートパソコン用のトラベル充電器に比べ 約50%ほど小型化されています。普段使でも旅行でも、ポケットに入れて持ち歩くことが可能です。

 詳細はUSB PD ACアダプターの製品ページをご覧いただくか、弊社営業にお気軽にお問い合わせをお願い致します。

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