USB PD(Power Delivery)とは?最大100W・240Wの仕組みとPD3.0/PD3.1の違い
USB PD(パワーデリバリー)は、USB Type-Cで最大100W(SPR)、USB PD 3.1のEPRで最大240Wを給電する規格です。仕組み、ケーブルの条件、PD3.0とPD3.1の違いを、世界最小・最軽量クラスの65W USB PD充電器を量産するユニファイブが解説します。
目次
USB PDの基本と主な機能
USB PDは、機器に合わせて電圧と電流を決める給電規格
USB Power Delivery(USB PD、パワーデリバリー)は、USB Type-Cで電力を供給するための規格です。USBの規格策定団体であるUSB-IF(USB Implementers Forum)が策定しています。
電源(ソース)と機器(シンク)は、USB Type-CのCC(Configuration Channel)ラインで通信します。電源は、この通信で電圧と電流を決めてから、給電を始めます。そのため、1台の電源で、接続した機器ごとに合った電力を供給できます。
USB PDの給電範囲は、SPR(Standard Power Range)とEPR(Extended Power Range)の2つに分かれています。SPRでは最大100W、EPRでは最大240Wまで給電できます。
ポイント:USB PDは、給電のための規格です。データ通信の速度は、機器とケーブルが対応するUSBの通信規格で決まります。
USB PDの主な機能
- 従来のUSB1.1(2.5W)、USB3.0(4.5W)、USB BC1.2(7.5W)に比べて、大きな電力を供給できます。SPRでは最大100W、USB PD 3.1で追加されたEPRでは最大240Wです。
- 給電する側と受電する側を入れ替えることができます(ロール・スワップ)。例えば、パソコンから外付けバッテリーを充電した後に、外付けバッテリーからパソコンを充電できます(USB Type-Cケーブルの場合)。
- 複数の外部機器の間で、電力の配分を最適化できます。
- 接続した機器に合わせて、電力を自動で調整します。
SPRとEPRの違い
SPRは、USB PDの従来からの給電範囲です。EPRは、USB PD 3.1で追加された給電範囲です。次の表で、SPRとEPRを比べます。
| 項目 | SPR(Standard Power Range) | EPR(Extended Power Range) |
|---|---|---|
| 最大電力 | 100W(20V・5A) | 240W(48V・5A) |
| 代表的な固定電圧 | 5V、9V、15V、20V | SPRの電圧に加えて、28V、36V、48V |
| 電圧を調整する機能 | PPS(Programmable Power Supply):3.3V〜21V | AVS(Adjustable Voltage Supply):15V〜48V |
| 追加された版 | USB PDの従来からの範囲 | USB PD 3.1 |
| ケーブルの条件 | 100W(5A)で給電するには、5A対応のUSB Type-Cケーブルが必要です。 | EPR対応ケーブルが必要です。EPR対応ケーブルは、E-Markerというチップを搭載し、50V・5Aに対応しています。 |
| 給電の条件 | 電源と機器が、USB PDに対応していること | 電源、機器、ケーブルのすべてが、EPRに対応していること |
USB PD対応機器を設計するときの注意点は、USB PD対応機器の設計における注意点で解説しています。
USB Type-CとUSB PDの違い
USB Type-Cは、コネクタとケーブルの規格です。USB PDは、USB Type-Cを使って電力を供給するための規格です。
USB Type-Cのコネクタは、給電とデータ通信の両方に使えます。データ通信の速度は、USB 2.0やUSB4など、機器とケーブルが対応するUSBの通信規格で決まります。USB PDで給電できるのは、電源と機器の両方がUSB PDに対応している場合です。USB Type-Cについては、USB Type-Cとは?で解説しています。
USB PDの版と追加された機能
USBのポートは、もともとデータ転送を主な目的としていました。現在は、車内、公共のバス、飛行機内など、多くの場所でUSBのポートが充電に使われています。USB PDは、版を重ねるごとに、給電の機能を広げてきました。
USB PD 3.0:ロール・スワップの高速化と認証機能
USB PD 3.0は、USB-IFが策定した規格です。USB PD 3.0の目的の1つは、品質の低いケーブルや、規格を満たさない製品を見分けて、USB PDを安全に使えるようにすることです。
USB PD 3.0では、USB PD 2.0に比べて、ロール・スワップが速くなりました。そのため、電源の供給が止まった場合でも、データが壊れるリスクが小さくなります。
また、USB PD 3.0では、C-AUTH(USB Type-C Authentication)という、機器間の相互認証の機能が追加されました。機器同士が、接続した機器やケーブルが信頼できる製品かどうかを確認します。問題がある場合は、機能を制限します。
USB PD 3.1:最大240W給電の進化
USB-IFは、2021年5月26日に、USB Power Delivery(USB PD)Revision 3.1の新しい仕様を発表しました。USB PD 3.1は、USB Type-C®のケーブルとコネクタで、最大240Wの電力を供給できるようにするための大きな更新です。それまでのUSB PDは、定格5AのUSB Type-Cケーブルを使った20Vの給電で、最大100Wに制限されていました。
USB PD 3.1に合わせて、USB Type-Cの仕様もリリース2.1に更新され、240Wのケーブルの要件が定義されました。また、USB PDのプロトコルと電源の定義も更新されました。その結果、100Wでは電力が足りなかった多くの機器にも、USB PDを使えるようになりました。
新しいUSB PDでは、以前よりも厳しい電力ネゴシエーションのプロトコルが定義されています。このプロトコルにより、大きな電力を安全に使えるようになっています。なお、100Wから240Wの電力を使う製品の安全要件は、消費電力の小さい製品よりも厳しくなります。安全要件は、製品を販売する国の規制に基づいて適用される安全規格で決まります。
USB PD 3.1により、大型のノートパソコンなど、大きな電力を使う製品も、USB Type-Cで給電できるようになりました。
EPRで追加された28V・36V・48Vの固定電圧
USB PD 3.1の主な新機能は、EPR(Extended Power Range、拡張電力範囲)です。EPRにより、20Vを超える電圧で給電できるようになりました。
SPRの固定電圧は、5V、9V、15V、20Vです。EPRでは、28V、36V、48Vの3つの固定電圧が追加されました。28Vは100Wを超える給電、36Vは140Wを超える給電、48Vは180Wを超える給電に使います。電流はいずれも最大5Aです。そのため、28Vでは最大140W、36Vでは最大180W、48Vでは最大240Wを給電できます。
また、EPRでは、AVS(Adjustable Voltage Supply)により、15Vから48Vの範囲で電圧を調整して給電することもできます。
EPRモード:高出力を安全に供給する仕組み
EPRモードは、大きな電力を安全に供給するための通信プロトコルです。ソース(電源側)とシンク(機器側)は、EPRモードに入る前に、互いの機能を確認します。そして、安全に給電するための合意をします。
CCラインで最適な電力を自動で決める仕組み
USB Type-Cには、CC(Configuration Channel)という専用の信号ラインがあります。USB PD対応の機器を接続すると、電源と機器がCCラインで通信します。電源は、機器に最適な電力を自動で判断し、すぐに給電を始めます。
Type-Cケーブルの進化:EPR対応で安全性向上
USB PD 3.1に合わせて、USB Type-Cケーブルの仕様もバージョン2.1に更新されました。EPR対応ケーブルは、E-Markerというチップを搭載しています。E-Markerは、そのケーブルが50V・5Aに対応していることを示します。これにより、大きな電力で給電するときの安全性と信頼性が高まります。
GaN(次世代パワー半導体)との組み合わせで高効率・小型化
GaN(窒化ガリウム)は、次世代の半導体材料として注目されています。GaNを使ったパワーデバイスは、従来のシリコンのパワーデバイスに比べて、電力損失が少なく、スイッチング速度が速いという特徴があります。USB PDの電源にGaNを使うと、高効率と小型化を両立できます。GaNについては、GaN(窒化ガリウム)を使ったACアダプターとはで解説しています。
また、当社は、回路方式の工夫でもUSB PD充電器を小型化しています。次世代パワー半導体を使わずに、体積46ccの65W USB PD充電器を量産しています。詳しくは、世界最小・最軽量クラスの65W USB PD充電器をご覧ください。
時系列に沿ったUSB PDの歴史
ここでは、USB PDの歴史を時系列で振り返ります。次の表は、USB PD 3.1が登場するまでの規格と、主な出力をまとめたものです。
| 発表年 | USB規格 | USBコネクタ | 出力 |
|---|---|---|---|
| 2010年 | BC1.2 | Type-A | 5V/1.5A |
| 2012年 | PD1.0 | Type-A、Type-B | 最大100W(20V/5A)。5つのプロファイルで定義 |
| 2014年 | PD2.0 | Type-C | 5V/3A、9V/3A、15V/3A、20V/2.25A、20V/3A、20V/5A |
| 2015年 | PD3.0 | Type-C | 5V/3A、9V/3A、15V/3A、20V/2.25A、20V/3A、20V/5A |
| 2017年 | PD3.0(PPS) | Type-C | 5V/3A、9V/3A、15V/3A、20V/2.25A、20V/3A、20V/5A PPS:3.3〜5.9V/3A、3.3〜11V/3A、3.3〜16V/3A、3.3〜21V/3A、3.3〜21V/5A |
| 2021年 | PD3.1 | Type-C | SPR:5V/3A、9V/3A、15V/3A、20V/3A、20V/5A EPR:28V/5A、36V/5A、48V/5A AVS:15〜28V/5A、15〜36V/5A、15〜48V/5A |
USB PD以前:低電力充電と規格の乱立(1996年〜2012年)
- 1996年:USB 1.0が登場しました。当初はデータ転送が主な目的でしたが、周辺機器への給電もできました。しかし、供給電力は5V・100mAと非常に小さく、充電には向いていませんでした。
- 2000年:USB 2.0が登場しました。データ転送の速度が大きく向上しました。供給電力も5V・500mAに増え、携帯電話などの充電にも使われるようになりました。
- 2007年:バッテリー充電の規格であるUSB BC(Battery Charging)1.1が登場しました。電圧は5Vのままですが、最大1.5Aの電流を供給できるようになり、7.5Wまで給電できるようになりました。
- 2010年:USB BC 1.2が登場しました。充電動作の仕様が、より確かなものになりました。
- この時期、USBでの充電は広まり始めました。しかし、電力の不足と、規格の乱立という問題が残っていました。ノートパソコンなど、より多くの電力を必要とする機器は、USBでは充電できませんでした。
USB PDの誕生と進化:高出力・双方向給電の時代へ(2012年〜2021年)
- 2012年:USB PD 1.0が登場しました。最大100W(20V・5A)の給電ができるようになり、ノートパソコンなどの大型の機器も充電できるようになりました。
- USB PD 1.0では、給電の能力を5つの標準的な「プロファイル」で定義していました。また、ホストと機器の間で電圧と電流をネゴシエーション(交渉)して、安全に給電する仕組みを実現しました。しかし、従来のUSBコネクタには常に5Vの電圧がかかっていたため、双方向の給電はできませんでした。
- 2014年:USB PD 2.0が登場しました。プロファイル方式からPDO(Power Data Object)方式に移り、より柔軟に給電できるようになりました。また、USB Type-Cコネクタが登場し、USB PDの進化を加速させました。USB Type-Cコネクタは小型で、上下対称の形です。そのため、表と裏を気にせずに挿し込めます。
- 2015年:USB PD 3.0が登場しました。USB PD 3.0には、機器認証の規定が盛り込まれ、安全性が向上しました。
- その後、USB PD 3.0にPPS(Programmable Power Supply)の機能が追加されました。PPSでは、電圧を20mV単位で細かく調整できます。PPSにより、リチウムイオン電池などの充電を最適化できるようになりました。
USB PD 3.1とGaN技術:さらなる高出力化と高効率化へ(2021年〜)
- 2021年:USB PD 3.1が登場しました。EPR(Extended Power Range)が導入され、最大240W(48V・5A)の給電ができるようになりました。また、GaN(窒化ガリウム)の技術が進歩し、USB PD電源の高効率化と小型化が進んでいます。EPC9195のように、GaNを使ったリファレンスデザインも登場しています。
当社のUSB PD対応ACアダプター
USB PDは、ノートパソコン、スマートフォン、タブレットだけでなく、家電製品や産業機器など、さまざまな分野での活用が期待されています。当社は、テクノフロンティア2018でUSB PD対応製品を発表しました。その後も、USB PD対応ACアダプターのラインアップを広げています。
当社の強みの1つは、電源の小型化です。電源が小さくなると、機器本体も小さく設計できます。電源の小型化は、機器全体のコストダウンにも貢献します。
世界最小・最軽量クラスの65W USB PD充電器を量産しています
当社は、65WのUSB PD充電器を量産しています。この充電器の体積は46cc、重量は65gです。この充電器は、65WのUSB PD充電器として、世界最小・最軽量クラスです(※)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出力 | 65W(USB Type-C、USB PD・PPS対応) |
| 体積・重量 | 46cc、65g(従来品と比べて、体積を42%、重量を40%削減) |
| 変換効率 | 約94% |
| 小型化の方法 | 入力電圧を250V以下に抑えるクランプ回路(DAC:デュアルアクティブクランプ)を採用しています。この回路により、400V級の大型の電解コンデンサーを、250V以下の小型の部品に置き換えました。パワー半導体には、250V耐圧のSi MOSFETを使っています。 |
| EMI(ノイズ) | CISPR 32 Class Bに対して、−6dBのマージンを確保 |
| 安全規格 | PSE、IEC 62368-1に適合 |
この充電器の回路技術は、パートナー企業が開発しました。当社は、高速スイッチング回路の基板設計、ノイズ対策、小さな筐体での放熱設計、安全規格への適合を担当し、量産できる製品にしました。次世代パワー半導体を使わなくても、回路と設計の工夫で電源を小さくできることを示した事例です。詳しくは、65W USB PD充電器の量産化の事例をご覧ください。
※ 65WのUSB PD充電器としての比較です。製品の販売元の調べ(2025年6月時点)によります。
標準品のラインアップ:最大100W(20V・5A)
当社は、USB PD対応ACアダプターを標準品でそろえています。最大の出力は、SPRの上限である100W(20V・5A)です。USB-Cケーブル一体型と、USB Type-Cのポート(レセプタクル)型の両方があります。次の表は、代表的な機種の出力(PDO)です。
| 電力 | 型番 | 出力(PDO) | 形状 |
|---|---|---|---|
| 20W | UNVFUL3020 | 5V/3.0A、9V/2.22A、12V/1.67A | USB-Cケーブル一体型(ウォールマウント) |
| 30W | UNVUU3030 | 5V/3.0A、9V/3.0A、12V/2.5A、15V/2.0A、20V/1.5A(PPS対応) | USB-Cケーブル一体型 |
| 45W | UNDGI3045 | 5V/3.0A、9V/3.0A、12V/3.0A、15V/3.0A、20V/2.25A | USB-Cケーブル一体型(ACインレット IEC 320 C8) |
| 65W | UNDGI3065 | 5V/3.0A、9V/3.0A、12V/3.0A、15V/3.0A、20V/3.25A | USB-Cケーブル一体型(ACインレット IEC 320 C8) |
| 100W | UNDGI3100 | 5V/3.0A、9V/3.0A、12V/3.0A、15V/3.0A、20V/5.0A(PPS対応) | USB-Cケーブル一体型(ACインレット IEC 320 C8) |
Quick Charge(QC)やAppleモードに対応した機種もあります。安全規格と仕様の詳細は、各製品のページでご覧いただけます。すべての機種は、次の一覧でご覧いただけます。
標準品にない出力は、カスタム電源で対応します
標準品にない電圧と電流の組み合わせ(PDO)、ケーブルの長さ、コネクタの形状、ラベルなどは、当社がカスタム電源で対応します。当社のカスタム対応には、標準品をベースに必要な部分だけを変えるセミカスタムと、ゼロから新しく設計するフルカスタムがあります。100Wを超える給電が必要な場合も、仕様をお聞かせください。
カスタム対応の考え方は、電源のカスタム対応とは?で解説しています。カスタム電源の事例は、カスタム対応のページでご覧いただけます。機器に合わせた推奨アダプターの選び方は、USB PD対応機器の設計における注意点で解説しています。
USB PDに関するよくある質問
USB PDで100Wを超える給電はできますか?
はい。USB PD 3.1で追加されたEPRを使うと、最大240W(48V・5A)まで給電できます。ただし、電源、機器、ケーブルのすべてがEPRに対応している必要があります。当社の標準品は、最大100Wです。100Wを超える給電も、カスタム電源としてご相談ください。
USB PDとQuick Charge(QC)の違いは何ですか?
USB PDは、USB-IFが策定した給電の規格です。Quick Charge(QC)は、Qualcomm(クアルコム)社が開発した急速充電の方式です。当社の標準品には、USB PDとQCの両方に対応した機種もあります。2つの違いは、PD3.0とQC3.0の違いとは?で解説しています。
USB PD充電器を小さくするには、どのような方法がありますか?
主な方法は2つあります。1つ目は、GaN(窒化ガリウム)などの次世代パワー半導体を使い、損失と発熱を減らす方法です。2つ目は、回路方式を工夫して、大きな部品を小さな部品に置き換える方法です。当社は、2つ目の方法で、体積46cc・重量65gの65W USB PD充電器を量産しています。
標準品にない電圧のUSB PD電源は作れますか?
はい。当社がカスタム電源で対応します。必要な電圧と電流の組み合わせ(PDO)、ケーブル、コネクタ、使用環境、安全規格をお聞かせください。
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