フルカスタム対応のワークフロー
目次
1. フルカスタムのワークフローの特徴
フルカスタムは、回路・トランス・基板・筐体までをゼロから新規設計するカスタム対応です。標準品では実現できない独自仕様、機器一体型の構造、特殊な動作環境への適合など、お客様の要件に対して完全にオーダーメイドで電源を作り上げます。
フルカスタムのワークフローには、以下のような特徴があります。
- 要件への完全適合:機器側の機械的制約、電気的要件、動作環境の要求にすべて合わせ込んだ専用設計が可能です。
- 機器一体型・特殊形状への対応:機器内蔵の基板電源、特殊筐体、独自コネクタ、特殊ケーブルなど、標準品では実現できない構造に対応します。
- 独自仕様での差別化:他社が容易に追随できない独自設計とすることで、お客様の最終製品の競争優位性につながります。
- 各国の安全規格を新規取得:PSE・UL・CE・GS・CCC・KC など、仕向地に応じた安全規格の取得を、当社にて新規対応します。
- 長期供給を前提とした設計:部品調達の継続性、量産安定性を考慮した設計を行うことで、長期にわたる安定供給を支えます。
セミカスタムとの違い:セミカスタムは、当社の標準品をベースに一部仕様を変更する対応で、新規設計工程を伴いません。フルカスタムは、市場分析から基本設計、詳細設計、試作、認証取得、量産までを一貫して新規開発で行うため、開発期間と費用は増えますが、要件への完全適合が可能です。標準品ベースで対応できる場合は、セミカスタムのワークフローのページもあわせてご参照ください。
2. ワークフロー全体図
フルカスタムは、以下の8つの工程で進めていきます。お客様のお問い合わせから新規設計、認証取得、量産立ち上げ、その後の継続供給までを一貫してサポートします。
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STEP 1 お問い合わせ・ |
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STEP 2 基本設計方針の |
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STEP 3 詳細設計 |
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STEP 4 試作・ |
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STEP 5 安全規格 |
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STEP 6 量産試作 |
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STEP 7 量産・ |
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STEP 8 継続供給・ |
3. 各工程の詳細
各工程で何を行い、どのような情報のやり取りが発生するかをご紹介します。
STEP 1:お問い合わせ・要件ヒアリング
お問い合わせフォームまたは当社営業を通じて、ご要件のヒアリングを行います。フルカスタムの場合、機器側の機械的制約や電気的要件を詳細に確認することが、後工程の設計品質に直結します。
- 機器の用途、想定される使用方法
- 必要な出力仕様(電圧・電流・複数出力・USB PD profile など)
- 機械的要件(筐体サイズ、設置方法、機器一体型/独立型)
- 使用環境(周囲温度範囲、湿度、屋外設置、振動、塩害、雷サージなど)
- 仕向地・販売先(取得が必要な安全規格を確定するため)
- 想定生産数量、量産開始時期、長期供給期間
- 独自要件(特殊形状、特殊コネクタ、ブランディング、機器との通信機能など)
機器側の図面、仕様書、競合品のサンプルなどをご提示いただけると、その後の検討がスムーズに進みます。NDA締結後の詳細協議にも対応します。
STEP 2:基本設計方針のご提案
ヒアリング内容をもとに、当社の電源設計部門が基本設計方針を策定し、ご提案します。この段階では以下の内容を確定していきます。
- 回路方式・トポロジーの選定(フライバック、フォワード、共振型など)
- 主要部品の選定方針(パワーデバイス、トランス、出力コンデンサなど)
- 構造方針(基板構成、放熱方式、絶縁設計)
- EMC・ノイズ対策の方針
- 適用する安全規格と取得スケジュール
- 開発期間・開発費・想定量産単価のお見積り
この段階で技術仕様書(ドラフト)と概念図をお客様にご提示し、合意のうえで詳細設計フェーズに進みます。
STEP 3:詳細設計
確定した基本設計方針にもとづき、各要素の詳細設計を行います。
- 回路設計:主回路、保護回路、フィードバック制御、突入電流対策など
- トランス設計:巻線設計、絶縁構造、漏れインダクタンス、温度上昇
- 基板(PCB)設計:パターン設計、放熱設計、絶縁距離、製造性の確保
- 筐体・金型設計:機械的強度、放熱性、組立性、機器との適合
- EMC/EMI設計:ノイズフィルター、シールド、グランド設計
- 部品選定の最終確定:部品の入手性、長期供給性も考慮
詳細設計の各段階で、デザインレビューを実施し、品質と仕様適合を確認します。
STEP 4:試作・お客様評価
詳細設計にもとづき、試作機を製作します。筐体については本金型での製作の前段階として、簡易型または3Dプリント等の方法で試作対応する場合もあります。
当社にて電気特性評価、温度試験、信頼性評価を実施し、評価データをお客様にご提供します。お客様側でも実機との組み合わせ評価、動作確認を実施いただきます。
評価結果に応じて設計の見直しが必要な場合は、再設計・再試作で対応します。設計の凍結は、この試作評価が完了した時点で行います。
STEP 5:安全規格認証取得
設計凍結後、仕向地に応じた安全規格の認証を新規取得します。フルカスタムの場合、認証はゼロから取得する必要があり、認定ラボでの試験・審査を経て認証発行となります。
対応可能な主な安全規格は以下の通りです。
- 日本:PSE
- 北米:UL、cUL、FCC
- 欧州:CE、GS、UKCA
- 中国:CCC
- 韓国:KC
- 台湾:BSMI
- インド:BIS
- オセアニア:RCM
- その他:仕向地に応じて個別対応
認証取得には、仕向地により1〜6ヶ月程度の期間を要します。スケジュールに合わせて、必要な認証から優先的に取得を進めます。
STEP 6:量産試作(パイロットラン)
量産用の本金型・治具・検査設備を整備したうえで、量産工場でのパイロットランを実施します。これは量産開始前の最終確認工程であり、以下を検証します。
- 量産工程での組立性、作業性
- 量産品の電気特性のばらつき
- 検査工程の妥当性
- 初回ロットの品質安定性
- リードタイム・歩留まりの見込み
パイロットラン品をお客様にもサンプル提供し、量産開始の最終ご承認をいただきます。
STEP 7:量産・品質検査
量産工場での生産を開始します。当社では量産品に対して、以下の3段階の品質検査を実施しています。
- 部品受入検査(IQC):一部の梱包部品を除く全ての部品を対象に、抜き取り方式での受入検査および有害物質検査を実施します。
- 工程検査(IPQC):仕様に基づいた生産、超音波溶着の確実な実施、作業指示書に沿った工程進行状況などを、全ロットにて確認します。
また、半製品および完成品に対しては、絶縁抵抗試験や耐圧試験等を全ての生産ロットで実施し、品質の確認を行います。 - 出荷検査(OQC):安全規格の要求事項および仕様書にもとづいた電気特性を、全ての生産ロットに対して抜き取り方式で検査します。
検査基準には ANSI/ASQ standard Z1.4 の Level-Ⅱ を採用し、致命欠点・重欠点・軽欠点それぞれに対してAQL基準を設定しています。詳しくは品質への取り組みのページをご参照ください。
STEP 8:継続供給・アフターサービス
量産開始後は、長期にわたる継続供給とアフターサービスをサポートします。フルカスタムは専用設計のため、お客様の事業計画に合わせた長期供給戦略が立てやすいことも利点です。
- トレーサビリティ管理:当社では生産履歴データを20年間保存しており、長期にわたる品質追跡が可能です。
- 不具合対応:不具合が発生した場合は、解析を実施し、発生原因と流出原因を特定したうえで、再発防止策を講じます。
- 派生品・追加仕様への対応:量産開始後にケーブル違いの派生品や、追加の仕向地向け仕様などにも柔軟に対応します。
- 部品EOL対応:使用部品の生産終了(EOL)が発生した場合、代替部品への切り替え検討と再認証対応を行い、長期供給を維持します。
- 長期供給:部品調達状況をモニタリングし、長期にわたる安定供給を支えます。
4. お問い合わせ
フルカスタムのご相談は、要件のヒアリングから基本設計方針のご提案、詳細設計、認証取得、量産までを当社が一貫してサポートします。「標準品では対応できない要件がある」「機器一体型の電源を検討している」「独自仕様で他社と差別化したい」といった案件は、お気軽にお問い合わせください。