空調服向けACアダプターのフルカスタム開発事例|別表第十二・J60335-2-29適合、CC/CV対応

空調服向けACアダプターのフルカスタム開発事例。セット側の設計変更を伴わない切り替えを要件に、ケースとDCプラグを新規設計し、別表第十二・J60335-1/J60335-2-29に基づくPSEを新規取得。CC/CV制御に対応し、短納期で量産化しました。

空調服向けカスタムACアダプター開発事例

電源の調達先を見直したい――そんな設計・調達ご担当者様へ

すでに量産中の製品で電源メーカーを切り替える場合、難しいのは新しい調達先を見つけることではありません。切り替えること自体がリスクになるという点です。

ケースの形状、DCプラグの寸法、充電の挙動。どれか一つでも変われば、セット側の設計や取扱説明書、場合によっては安全規格の認証まで影響が及びます。現行品が問題なく流れている以上、何かが起きれば責任を負うのは変更を決めた側です。この非対称性が、見直しを先送りさせます。このリスクは電源側の作り方で小さくできます。

もう一つ、社内の説明という壁があります。品質を理由にした切り替えは数値で示しにくいため、稟議が通りにくい。品質だけでなくコストや供給体制についても同時に説明できる提案でなければ、社内は動きません。

本事例は、空調服向けACアダプター(ファン付き作業着のバッテリーを充電するACアダプター)を他社製から切り替えるにあたり、セット側の設計変更を伴わないことを要件として、ケース・DCプラグの新規設計からPSEの新規取得までを行った開発事例です。以下、判断が必要になった3つの論点に沿ってご説明します。


① 現行品との互換を保つための設計上の判断

お客様のご要望は「現行品に可能な限り合わせたい」という一点でした。当社としては、既存製品をベースとしたセミカスタムでの対応も技術的には可能と考えていました。しかし現行品のケース形状は既存ラインアップのいずれとも一致せず、DCプラグも一般的な寸法ではない特殊な構造でした。

ここで判断が必要になります。電源側を既存の形に寄せてセット側を改修するか、電源側を新規に起こしてセット側を触らないか。

前者は初期費用を抑えられますが、セット側の筐体変更、取扱説明書の改訂、場合によっては最終製品の認証にまで波及します。後者は金型費用と開発期間が必要になりますが、影響範囲は電源の中に閉じます。

本件では、ケースとDCプラグをいずれも新規に設計し、それぞれ専用の金型を製作するフルカスタムをご提案しました。初期費用だけを見れば増えますが、セット側の改修工数と再認証のリスクを含めた総コストでは、こちらが小さくなるという判断です。

見落とされやすい点:互換性の確認は、形状と電気的仕様だけでは足りません。銘板(ラベル)の表記も認証の対象に含まれます。とくにACアダプターが機器と一体で認証を取得している場合、アダプター側の表記を変更すると機器側の認証まで再申請が必要になることがあります。設計変更としては軽微に見えても、納期への影響は小さくありません。


② バッテリー充電器に適用される技術基準

バッテリーを充電する用途のACアダプターは、一般的な機器用電源とは適用される技術基準が異なる場合があります。

本件では、電気用品安全法の技術基準として別表第十二を適用し、安全性についてはJ60335-1およびJ60335-2-29への適合が指定されました。J60335-2-29はバッテリチャージャに関する個別規格です。情報技術機器向けの規格とは要求される試験項目も構造上の制約も異なるため、どちらを適用するかは設計を始める前に確定させておく必要があります。

加えて本件では、電気的な要求としてCC/CV(定電流・定電圧)制御が指定されました。リチウムイオン電池は、まず一定の電流で充電し、電圧が上がった段階で一定電圧に切り替える制御が必要です。電圧を出力するだけのACアダプターでは、過充電や電池寿命の低下につながるおそれがあります。

当社は、この充電特性に対応したリチウム電池充電用ACアダプターを12Wから200Wまで標準ラインアップとして揃えています。フルカスタムの場合でも、標準品で蓄積した回路設計と規格対応の知見をそのまま活かせるため、ゼロから検討を始める場合と比べて設計の確度を高めることができます。

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③ 短納期を成立させる部材手配の見極め

新規に金型を起こし、安全規格も新規に取得する。この2つを順番に進めてから部材を手配していては、量産開始に間に合いません。本件はスケジュールに余裕がなく、工程を並行させる必要がありました。

そこで当社から、部材の手配を開始すべき時期を事前にお伝えし、お客様に内示をいただいたうえで日程を組み立てました。さらに、最終的な納期に間に合わせるため、一部をAIR出荷に切り替えています。

ここで重要なのは、先行手配が納期短縮の手段であると同時に、在庫リスクでもあるという点です。評価の途中で部品変更が入れば、その部品の調達期間に全体が引きずられます。だからこそ、どの段階でどこまで手配するかを事前に取り決めておく必要があります。

当社では、部材ごとの調達期間をお伝えしたうえで、内示の運用と合わせて手配計画を設計しています。「間に合いません」と言う前に、何をいつ決めれば間に合うのかをお示しすることが、電源メーカーの役割だと考えています。


開発事例のまとめ

項目 内容
用途 空調服(ファン付き作業着)のバッテリー充電用ACアダプター
対応区分 フルカスタム(ケース新規金型、DCプラグ新規金型、PSE新規取得)
安全規格 電気用品安全法 別表第十二/J60335-1・J60335-2-29
電気的要求 CC/CV(定電流・定電圧)制御
納期対応 部材の先行手配(内示運用)、一部AIR出荷
結果 セット側の設計変更を伴わない切り替えを実現し、量産に移行

お客様の声

お客様の声 「セット側を変えずに電源だけ切り替えるのは無理だと思っていましたが、形状もプラグもそのまま実現していただけました。おかげで予定どおり量産を開始できました!」
─ ファン付き作業着メーカー 開発ご担当者様

同じようなお悩みはありませんか

現行の電源と同じ形状・同じDCプラグのまま、メーカーだけを切り替えたい
リチウム電池の充電にCC/CV制御が必要だが、適した電源が見つからない
充電用電源にどの技術基準を適用すべきか、判断がつかない
安全規格の取得を含めて、量産までのスケジュールに余裕がない
調達先を見直したいが、切り替えの妥当性を社内に説明する材料がほしい

当社は1989年の創業以来、ACアダプター・スイッチング電源のメーカーとして、設計から製造、量産後のアフターサポートまでを自社で担ってきました。金型の新規製作、安全規格の取得、量産立ち上げまでを一つの窓口で進められます。

標準品で対応できるのか、カスタムが必要なのか。その判断からお手伝いできますので、仕様がお決まりでない段階でもお気軽にご相談ください。

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※本事例はお客様の許諾範囲で掲載しています。企業名・製品名・数量・価格等は非公開としています。
※「空調服」は株式会社セフト研究所および株式会社空調服の登録商標です。本ページでは製品の用途を説明する目的で使用しています。